消化器内科
当院では、日本消化器病学会の専門医による診断・治療を行っております。
みぞおちが痛む、胃の調子が悪い、胸焼けする、便が細くなった、下痢が続いている、黒色便や血便が出る、食欲がなくてだるい、目や皮膚が黄色くなってきた、急激に体重が減ってきた、などの不調を感じた時、健診や人間ドッグで異常を指摘された時、などは当院にご相談ください。
食道・胃・十二指腸の症状と疾患
食道、胃、十二指腸は消化管の一部です。食道は食べ物をのどから胃に運ぶ役割をしており、胃・十二指腸は食べ物を消化しながら小腸へ引き渡す役割をしています。 食道・胃・十二指腸の主な病気について解説します。
食道の病気
逆流性食道炎
逆流性食道炎は、胃液や胃の内容物が逆流して食道に炎症が起き、胸やけや吞酸(どんさん:のどの辺りや口の中がすっぱく感じる状態)、胸の痛み、のどの違和感などの症状を引き起こす病気です。原因として、加齢・脂質の摂り過ぎ・肥満・姿勢などが考えられます。 胃内視鏡検査で食道の状態を観察し、状態を確認します。主な治療方法は胃酸の分泌を抑制する薬の内服と生活習慣の改善です。
食道がん
食道がんは、食道粘膜内の細胞が悪性腫瘍に変化することで発生します。食道には多くの血管やリンパ組織が集まっているため、発症すると他の部位(肺・骨・脳など)に転移しやすいがんの一つです。
初期症状を自覚することは少なく、進行すると食べ物がのどにつかえる感じ・しみるような感じが徐々に現れ、さらに進行すると咳(せき)、血痰(けったん)、嗄声(させい:声がかすれる)、体重減少、胸・背中の痛みなどの症状が現れ、また転移のリスクも高まります。 早期発見が非常に重要な疾患のため、、40代後半からは定期的な検査を受けることがおすすめです。
食道裂孔ヘルニア
人間の体内には胸部と腹部を上下に区分けしている横隔膜があり、その中に大動脈、大静脈、食道をそれぞれ貫通している孔(裂孔)があります。この食道の裂孔を通って、胃の一部が腹側から胸側に飛び出した状態を食道裂孔ヘルニアと言います。
原因として、加齢による裂孔のゆがみや肥満・姿勢や喘息などの影響による腹部への圧力負荷などが考えられています。自覚症状がない場合は経過観察で問題ありませんが、逆流性食道炎を併発した場合は薬物療法が必要となります。症状がひどい場合は、手術治療することもあります。
食道カンジダ
食道カンジダ症とは、カンジダ菌が食道内で増殖し炎症を起こす病気です。 カンジダは通常簡単に感染するものではありませんが、免疫力が低下している状況になると、食道内に感染して増殖します。
食道カンジダは胃内視鏡検査を行うと、食道粘膜に白いコケのようなに広がった状態として観察できます。自覚症状がない場合もありますが、食べ物がのどにつかえる感じやしみる感じといった症状がみられます。無症状の場合は自然治癒を期待し経過観察となりますが、自覚症状がある場合は、抗真菌薬を内服します。
胃・十二指腸の病気
萎縮性胃炎
萎縮性胃炎は、胃が長期間に渡り粘膜の炎症を起こし徐々に萎縮していく病気です。萎縮性胃炎の原因はほとんどヘリコバクター・ピロリ菌の感染とされています。
主な症状としては、胃粘膜の萎縮により胃の活動が妨げられることで起こる、胸やけ、胃もたれ、腹満感、食欲不振などがあります。胃内視鏡検査を行うことで、萎縮性胃炎かどうかを判断します。ピロリ菌感染が確認された場合は除菌治療を行います。
胃潰瘍・十二指腸潰瘍
胃潰瘍・十二指腸潰瘍は、胃や十二指腸の粘膜が弱って胃液(胃酸)によって傷つけられて発症する病気です。原因としては、ヘリコバクター・ピロリ菌の感染や解熱鎮痛薬(NSAIDs)低用量アスピリンなどの抗血小板薬の服用などがあります。
症状としては、腹部・みぞおちの痛み、胸やけ、腹部膨満感、食欲不振などがあり、潰瘍部分から出血があると、吐血や黒色便などの症状があります。
治療の流れとしては、胃内視鏡検査で潰瘍の状態を観察して、胃酸の分泌を抑制する薬・粘膜を修復する薬を内服します。ピロリ菌感染が確認された場合は、除菌治療も行います。
胃がん
胃がんは、男女ともに発症数がいまだに多い病気です。 初期段階では自覚症状はほとんどなく、進行すると胸の痛み、腹満感、食欲不振など胃潰瘍・十二指腸潰瘍と似た症状が現れます。胃潰瘍・十二指腸潰瘍を疑い胃内視鏡検査を行った際に発見されることも少なくありません。そのため、早期発見のためには定期的な検査が必要になります。
がん死亡予測(2017年)
男女計 | |
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部位 | 死亡数 |
全がん | 378,000 |
肺 | 78,000 |
大腸 | 53,000 |
胃 | 47,400 |
膵臓 | 34,100 |
肝臓 | 27,500 |
男性 | |
---|---|
部位 | 死亡数 |
全がん | 222,000 |
肺 | 55,600 |
胃 | 31,000 |
大腸 | 28,300 |
肝臓 | 17,900 |
膵臓 | 17,100 |
女性 | |
---|---|
部位 | 死亡数 |
全がん | 156,000 |
大腸 | 24,700 |
肺 | 22,400 |
膵臓 | 16,900 |
胃 | 16,400 |
乳房 | 14,400 |
胃ポリープ
胃のポリープは、胃粘膜の一部が隆起してできるイボ状のできものです。主な種類として胃底腺ポリープと過形成ポリープがあります。
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胃底腺ポリープ
ポリープの色が周囲の粘膜と類似しており、小さな半球状の形をしています。ピロリ菌に感染していない健康な胃粘膜に多発することが多いと報告されているものでがん化する可能性はほとんどなく、経過観察でよいポリープです。
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胃過形成ポリープ
表面が赤く光沢のあるポリープで、表面に凹凸がみられることがあります。ポリープのサイズが大きいと出血や貧血の原因になったり、がんを合併したりすることがあります。過形成ポリープはピロリ菌感染が原因と考えられておりますので、ピロリ菌感染が確認されればまずは除菌を行います(除菌でポリープが縮小・消失することがあります)。内視鏡切除の適応となることもあります。
胃粘膜下腫瘍
胃粘膜下腫瘍は、胃の粘膜よりも下の深層に発生する腫瘍のことです。多くの場合、自覚症状がないので健康診断や胃内視鏡検査などで偶然発見されます。サイズが小さければ経過観察となりますが、サイズが2cmを超える場合や増大傾向があれば超音波内視鏡などで精査する必要があります。
急性胃粘膜病変
急性胃粘膜病変とは、胃粘膜に広範なびらんや小潰瘍、出血などがみられる急性の胃粘膜傷害の総称です。激しい胸やみぞおちの痛み、吐き気、嘔吐、吐血などの症状が強く現れます。
原因は、アルコール・刺激物の過剰摂取、精神的・肉体的なストレス(過労)、解熱鎮痛薬などの副作用、アニサキスなどの寄生虫感染などがあります。胃内視鏡検査で診断が可能で、原因が特定できた場合はそれを取り除きます。診察・治療後粘膜の状態が軽度であれば、胃酸の分泌を抑制する薬・粘膜を修復する薬を内服して経過観察します。胃粘膜の状態の程度がひどい場合は、入院治療が必要になることもあります。
胃アニサキス症
アジ、サバ、カツオ、サケ、イカ、サンマなどの魚介類に寄生するアニサキスという寄生虫の一種が、胃の粘膜に噛み付くことで強烈なみぞおちの痛み、吐き気・嘔吐などの症状が起こります。これを胃アニサキス症といいます。
胃内視鏡検査で胃粘膜に噛み付いたアニサキスの除去を行います。非常に痛みが強いため、できるだけ早急に診察・治療を受けることをおすすめします。
大腸の症状と疾患
大腸は、他の消化管で吸収されなかった残りの栄養分と水分を吸収する消化管で、盲腸・結腸・直腸に大きく分けられます。また、不要になった成分を肛門まで運ぶ働きをしています。
大腸の代表的な疾患について解説します。
大腸炎
大腸炎の症状として代表的なものは、腹痛、嘔吐、下痢、血便、発熱などです。症状や原因によってさまざまな疾患に分類されます。
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感染性腸炎
ウィルス・細菌・寄生虫などが腸管に感染し炎症を起こして発症します。腹痛、嘔吐、下痢、発熱といった症状が現れます。
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虚血性腸炎
何らかの原因により腸管の血流が悪くなり、大腸の粘膜に炎症や潰瘍を発症します。通常は突然の腹痛(左側腹部~左下腹部が多い)後に血便がみられます。
また、「潰瘍性大腸炎」や「クローン病」といった炎症性腸疾患は、治癒が難しい慢性疾患ではありますが、専門医による適切な治療により症状を抑え、健康な人と変わらない日常生活を送ることが可能です。
気になる症状がある方は重症化してしまう前に、早めに専門医を受診しましょう。
虚血性腸炎
虚血性腸炎とは、大腸の血管が一時的につまり、栄養や酸素の供給が上手くいかず、大腸に炎症や潰瘍が起こる疾患です。血管の動脈硬化がみられる方が便秘により腸管内圧が上昇し、血管がつまることで発症すると考えられております。
また、高齢者の方で糖尿病、膠原病、血管炎などを患っている方にも多く見られます。
主な症状は、急激な左側腹部~左下腹部痛の後にみられる血便です。病歴の聴取、身体所見、血液検査、超音波検査、大腸内視鏡検査で診断します。
治療方法は安静、点滴しながら経過観察することです。重症の場合は、入院治療を検討する必要があります。
潰瘍性大腸炎
潰瘍性大腸炎は、大腸粘膜に炎症が生じて、びらんや潰瘍ができる炎症性腸疾患の一つです。
症状としては、血便、粘液便(ねばねばした便)、下痢や腹痛などがあり、重症化すると発熱や頻脈などの全身症状が現われます。 治療方法は、5-ASA(5-アミノサリチル酸)製剤をベースにした投薬治療があります。
しかし治療が作用しない、病状がひどい場合は、重症化し深い潰瘍や穿孔を起こす場合があります。また長期間炎症が続くと、大腸がんの原因となる場合があります。
当院では通院治療を主に行い、症状が悪くなった場合は総合病院・大学病院等と連携して治療を行っております。
大腸ポリープ
大腸ポリープは、大腸の粘膜に隆起したイボのような病変で、腫瘍性と非腫瘍性に分けられます。非腫瘍性の場合はすべて良性のポリープですが、腫瘍性の場合は良性と悪性の場合があります。良性であってもポリープが大きくなると、ポリープ内に一部がん細胞を認めることがあります。
大腸ポリープは無症状なため自覚しにくく、サイズが大きくなると便潜血検査で陽性反応が出ます。検査で陽性反応が出た場合は、速やかに大腸内視鏡検査を受けてください。
大腸内視鏡検査で発見したポリープは、大きさや形によってその場で切除したり、生検したりして、より詳しく検査することが可能です。便潜血検査で陽性反応が出ているのに放置すると、良性の腫瘍であっても、大腸がんへと進行してしまう可能性があるため、放置せずに検査を受けることをおすすめします。
便潜血検査が陰性の場合でも、大腸にポリープができている場合もあるので、がんを予防するためにも定期的な大腸内視鏡検査が重要です。
大腸がん
大腸がんは早期には自覚症状がほとんどありませんが、進行するにつれて血便、便秘、下痢、腹痛、腹部膨満感、貧血、便が細くなる、体重減少などの症状が現れます。
大腸がんは40歳以降で発症のリスクが高まるため、40歳を過ぎたら大腸内視鏡検査を受ける事をおすすめします。大腸ポリープや潰瘍性大腸炎は大腸がんへと発展する恐れがありますので、このような疾患をお持ちの方や、親族で大腸がんを発症した方も、定期的な大腸内視鏡検査で大腸がんを予防することが大切です。
過敏性腸症候群
過敏性腸症候群には、下痢や腹痛、便秘、腹部の膨満感、おならが出やすいなどの症状が慢性的に継続する病気です。同様の症状がある病気もありますが、過敏性腸症候群は、検査をしても特に異常が見つからないのが特徴です。
はっきりした原因は不明ですが、緊張・不安・興奮・睡眠不足・不規則な食生活といった精神的、肉体的なストレスが影響を与えていることが多いといわれています。症状に合わせて専門医による薬物療法による治療と並行して、原因となるストレスを改善させるための生活習慣の改善が必要です。
クローン病
主に若年層にみられる疾患で、口の中から肛門に至る全ての消化管に炎症や潰瘍が起こり得る疾患です。特に小腸・大腸を中心にして炎症や潰瘍がみられます。クローン病を発症すると、腸の狭窄や穿孔・腸閉塞・痔ろう・腹膜炎・関節炎などを併発することもあります。原因は現在のところ特定されておらず厚生労働省の指定難病とされており、そのため医療費補助制度の対象となっております。
主な症状は、腹痛、下痢、発熱、血便、体重減少、貧血など様々です。 完治が難しいため、治療法は主として寛解状態(症状がほとんどなく安定している状態)を維持するための薬物療法や栄養療法を継続する必要があります。また、腸閉塞や大量出血を来した場合は必要に応じて外科的治療を行うこともあります。
当院では通院治療を行い、病状が悪くなった時は総合病院・大学病院等と連携して治療を行っております。
大腸憩室炎
大腸憩室炎は、大腸の壁の一部が袋状に外に飛び出してできた大腸憩室に便が入り込むことで、細菌が繁殖し炎症・感染が起こる病気です。大腸憩室炎を発症すると、最初は腹痛や便秘、下痢といった症状が現れます。
悪化すると腹痛が持続的になり発熱を伴い、放置したままでいると大腸の一部が狭窄する腸閉塞や、憩室に穴が空いて、腹膜炎や膿瘍(膿の塊)などの合併症を伴う恐れがあります。大腸憩室炎は、基本的には点滴と絶食による治療をおこないます。
再発しやすいため、治療後も排便や食生活に注意が必要です。
胆管・胆のう・すい臓の症状と疾患
胆管とは、肝臓で作られた胆汁が流れる管です。胆管は肝臓の中から始まり、十二指腸まで続いています。胆のうは、胆管の途中についている洋ナシ状の臓器です。
胆管を流れている胆汁は、胆のうの中に一時的に蓄えられ、濃縮されます。食事をすると胆のうは収縮し、濃縮された胆汁を胆管内に戻します。この胆汁は、十二指腸にある胆管の出口(十二指腸乳頭)から排出され、食事中の脂肪やたんぱく質の消化に利用されます。
胆汁の色は黄褐色です。便の色が茶色いのは、この胆汁のためです。また肝臓では、1日に約600mLから1Lの胆汁が作られています。
膵臓は、胃の後ろにある長さ15cm程度の細長い臓器で、管(膵管)が通っており、膵臓で作られた膵液が流れています。膵管には主膵管と分枝膵管があり、無数の分枝膵管が主膵管に合流しています。膵管の出口は、胆管の出口と同じで、十二指腸にあります(十二指腸乳頭)。
膵臓には大きく2つの働きがあります。1つは膵液による食事の消化、もう1つは様々なホルモンを作ることです。代表的なホルモンがインスリンやガストリンで、血糖のコントロールを行っています。
胆のう、胆管、膵臓の病気の症状として、次のようなものがあります。
- 右上腹部の違和感・痛み(発熱や黄疸を伴うことあり)
- 心か部(みぞおち)の痛み(発熱や黄疸を伴うことあり)
- 背部痛黄疸(体が黄色くなる、尿が濃くなる、便の色が薄くなる)
- 黄疸(体が黄色くなる、尿が濃くなる、便の色が薄くなる)
- 食欲の低下、体重減少
気になる症状はありませんか?
また胆のう・胆管・膵臓の病気は、検診などの血液検査や画像検査(腹部超音波検査)で偶然発見されることがあります。以下のことに当てはまる方は、お気軽にご相談ください。
- 胆のうにポリープがある
- 胆のうの壁が厚い
- 胆のうに石がある
- 胆管が太い
- 胆管に石がある
- 膵臓にのう胞がある
- 膵臓に腫瘍がある
- 膵管が太い
- 膵臓に石がある
- 血液検査で肝機能障害を指摘された
- 血液検査で膵臓の酵素(アミラーゼやリパーゼなど)が高いと言われた
胆石症
胆石は胆道にできた結石のことで、結石があるだけで症状が現れないこともありますが、人によっては食後に右脇腹が痛くなる、吐き気・嘔吐、食欲不振などが起きることがあります。 また胆のうの出口や胆管で詰まるようになると、強い痛みが突然起きるようになります。
胆石は脂質異常症を発症している方に多く、他、肥満の方や40代以降の方、女性などにもよく見受けられると言われています。症状がある場合は、痛み止めや胆汁の流れを改善する薬を使用しながら、詰まりを解消させるようにします。 ただ、胆石が大きい場合や胆のう炎などを起こしている場合は、手術をする必要があります。
胆のうポリープ
胆のう(胆汁を一時的に溜めておく臓器で食事の際に排出する)の内側にできるポリープのことで、その種類は1つとは限らず、良性と悪性があります。
多くはコレステロールが粘膜に沈着することで発生する治療の必要がない良性のコレステロールポリープですが、腺腫性のものからがんへ移行するケースや胆のうがんの可能性もありますので注意が必要です。
ポリープの発生で起きる症状はほとんどありません。そのため、健診などで行う腹部超音波検査等で胆のうにポリープが発見されたということが良く見受けられます。発生の原因としては、肥満や脂質異常症など不摂生な生活習慣が引き金となって起きる場合が多いようです。
コレステロールポリープでは良性なので経過観察ということもありますが、胆のうがんの可能性がある場合は手術療法(開腹胆のう摘出術 など)が行われます。
膵炎
膵炎は大きく急性と慢性に分類されます。
急性膵炎
膵臓から分泌される膵液が原因となり、膵臓の周囲の臓器が損傷を受ける膵炎です。
原因としては以下が考えられています。
- アルコールや腹部の外傷や、薬剤、ウイルス感染
- 胆石や膵臓にできた石・腫瘍などが膵液の流れを妨げる
- 膵臓での過剰な自己免疫反応
主な症状は、みぞおちから左上腹部にかけての強い痛みや背部痛、吐き気や嘔吐などです。重症化しやすく、死亡率も高いので、上記のような症状がみらえたら直ちに治療を行う必要があります。
治療方法急性膵炎の場合、発症直後に適切な治療(安静・禁食・大量輸液をベースに、重症度や症状に応じた鎮痛剤・タンパク分解酵素阻害剤や抗菌薬等の投与)を行わないと、48時間以内に重症化、あるいは致死的な状況となるため、基本的に入院治療となります。
胆石による急性膵炎で胆管炎合併例・胆道通過障害の遷延を認める場合は、早期の内視鏡的逆行性胆管膵管造影/内視鏡的乳頭切開術(ERCP/ES)も検討されます。
慢性膵炎
膵臓の炎症が長期に渡って続いている状態で、それによって膵臓の細胞は破壊されて線維化し、硬くなってしまうことで膵臓の本来の機能が失われてしまう膵炎です。 原因としては、毎日大量の飲酒をしている、女性の場合は原因不明なケース(特発性慢性膵炎)で発症する場合もあります。
主な症状は、上腹部の痛みや背部痛で、前かがみになると楽になると言われています。また消化酵素が十分に出ないことで、体重の減少や下痢もみられます。
そのほか、吐き気・嘔吐、食欲不振なども現れます。このほかにも膵炎の病状が進行するとインスリンが不足して糖尿病を併発することもあります。
慢性膵炎の場合は、症状に応じた薬物療法や生活指導が主体となります。慢性膵炎が急激に悪化(急性増悪)した場合は、急性膵炎に準じた入院治療となります。
また、症状ごとに、治療方法が異なります。 また、慢性膵炎の症状のない膵石症の患者様でも、
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膵石症を伴う慢性膵炎の患者様
膵石症診療ガイドラインに則した治療
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慢性的な腹痛に悩まされているの患者様
薬物治療だけでなく、大学病院・総合病院での体外衝撃波結石破砕術(ESWL)や内視鏡的な膵石除去術を組み合わせた治療、場合によっては外科治療
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慢性膵炎の症状のない膵石症の患者様
膵石による膵管拡張(膵管の流れが悪くなって膵管が太くなる)を伴い、かつ、膵臓の萎縮が高度でなければ(組織量が十分保たれていれば)、将来的な膵炎の予防と膵臓機能の温存目的で、体外衝撃波結石破砕術(ESWL)や内視鏡的治療、外科治療、といった侵襲的治療の提案
のような治療方法がございます。
過敏性腸症候群
以前は過敏性大腸と呼ばれていましたが、大腸だけでなく腸全体の機能異常が認められたため過敏性腸症候群と呼ばれるようになりました。
この疾患は、腹痛や便秘、下痢などの症状が長期にわたり続いているのに、検便や大腸内視鏡検査などで観察をしても異常が認められないという特徴があります。発症する原因は明確にわかってはいませんが、最近では、緊張・不安などの精神的ストレスや、過労・睡眠不足・不規則な食生活といった身体的ストレスなどが加わることにより腸の蠕動運動(ぜんどううんどう)に変化が生じ、便秘や下痢といった症状を引き起こすといわれております。
過敏性腸症候群は、日本を含め先進国に多く20代から40代で多く発症します。繰り返す便秘や下痢によって、仕事や学校に著しく支障をきたし、外出を避けるようになってしまうなど、生活の質(QOL)の低下を招く場合も少なくありません。
潰瘍性大腸炎やクローン病などの疾患は、下痢や腹痛といった過敏性腸症候群の特徴と似た症状が現れるため、大腸内視鏡検査で詳しく観察し腸の病気を正しく診断することが大切です。過敏性腸症候群は、治療可能な病気なので「ただの腹痛や下痢だから」と、放置せずに当院を受診してください。
このような経験はございませんか?
- 下痢と便秘を交互に繰り返す
- 何の前触れもなく突然腹痛や下痢に襲われる
- 通勤、通学の電車内で腹痛でトイレに駆け込む
- 通勤の車内で急にお腹が痛くなる
- 仕事で大事な会議の前になると必ず腹痛になる
- 試験途中で腹痛になってしまう
- おなかがゴロゴロと鳴る
- 硬くてコロコロした小さな便が出る
- 人前で緊張するとガスが出る
- 旅行中も急な腹痛でトイレに駆け込む
- 寝ているときは、症状が現れない
- 1か月以上、おなかの調子が悪い日が続く
上記項目で当てはまる数が多ければ多いほど、過敏性腸症候群の可能性が高いです。
過敏性腸症候群の原因について
過敏性腸症候群の原因は、明確に分かってはいません
感染性腸炎の後に発症する患者様もおり、何らかの腸の免疫異常が関係している可能性があります。また、腸内細菌や食事、睡眠、ストレスなどにより自律神経が乱れることで、腸の蠕動(ぜんどう)運動が異常をきたし過敏性腸症候群の症状が現れるともいわれています。
腸と脳は密接に関係した「脳腸相関」にあります
脳が神経管を通してストレス信号を、腸管神経叢(ちょうかんしんけいそう)へ伝達すると、腸管が反応して腹痛・ガス・便通異常・腹部膨張感などの症状が現れます。この症状が、疲労感や不安感、緊張感等を生み、脳へストレスを与えてしまいます。脳がこのストレス信号を腸管神経叢へ伝達し、過敏性腸症候群の悪循環へとつながります。
過敏性腸症候群の患者様は、この信号の伝達が伝わりやすく、腸が過敏反応しやすくなっています。
下痢や腹痛は、腸内のセロトニンが関係しています
最近では、脳から腸管への信号伝達にセロトニンという神経伝達物質が深く関係しているといわれています。脳がストレスなどの刺激を受けることで腸内の粘膜からセロトニンが分泌され、腸のぜん動運動に異常をきたし腹痛や下痢などの症状を引き起こします。
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お腹の症状
腹痛、下痢、便秘、お腹の張り、残便感、お腹がゴロゴロ鳴る
-
お腹以外の場所で起こる症状
不眠、不安感、抑うつ、頭痛、めまい、肩こり、食欲不振
過敏性腸症候群の症状とは
腹痛を伴う便秘や下痢などの便通異常が長期にわたり継続して繰り返し起こります。排便後には、一時的に症状が軽快します。 食事により症状が誘発されますが、睡眠中は症状が現れないのがこの疾患の特徴です。
便秘や下痢といった主な症状のほかに、おなかがゴロゴロ鳴ってしまう(腹鳴)、おなかの張り(腹満感)、ガスが止まらない(放屁)などの症状も見られます。
過敏性腸症候群は、下痢型・便秘型・交代型と大きく3つに分類されます。
下痢型
突然現れる激しい腹痛を伴う下痢が、1日に3回以上繰り返し起こります。急な腹痛が怖くて外出することが困難になり、そのような不安やストレスがさらに症状を悪化させます。
便秘型
腸管の痙攣によって便が滞ってしまう状態です。排便の際に腹痛を伴い、強くいきまないと便が出ず、出てもウサギの糞のようなコロコロした硬く小さな便で、排便後も残便感が残るのが特徴です。
交代型
激しい腹痛を伴う便秘と下痢を交互に繰り返すのが特徴です。
診断と検査
まずは問診にて症状をお伺いし、ローマ基準という指標を用いて診断いたします。 腹痛・腹部不快感が1か月間で3日以上続き、以下3つの項目のうち2つ以上に該当するものがローマ基準による過敏性腸症候群の診断方法になります。
- 排便により症状がおさまる
- 排便の頻度の変化に伴い、症状が現れる
- 便の形状の変化によって、症状が現れる
さらに、似たような症状を伴う他の腸疾患(大腸がん、潰瘍性大腸炎、クローン病、感染性腸炎)がないかどうかを検査して確かめます。触診では腹部に腫瘤や圧痛がないかを調べます。
以下の症状に当てはまる方は、大腸内視鏡検査による観察が必要になります。
- 50歳以上で初めて発症された方
- 症状とともに発熱を伴う方
- 3㎏以上の体重の減少が認められる方
- 直腸からの出血がある方
過敏性腸症候群と他の疾患との違い
過敏性腸症候群
検査しても腸内に病気の原因が特定されず、腹痛や便通異常が繰り返し起こります。
大腸がん
大腸がんで腸内の消化物が通りにくくなることで上記症状が現れます。
炎症性腸疾患(潰瘍性大腸炎、クローン病)
腸の粘膜に炎症や潰瘍、ただれができます。
感染性腸炎
ウィルスや細菌、寄生虫などのが腸内で繁殖し炎症を引き起こします。
大腸憩室炎
大腸の憩室に便が入り込んで、細菌が繁殖して炎症・感染を引き起こします。
乳糖不耐症
牛乳などに含まれる乳糖を分解・消化する酵素が欠乏しているため消化吸収ができず下痢などの症状が現れます。
痔
切れ痔の場合は、いきむさいに痛みを伴うため便秘になりやすく、いぼ痔は下痢や便秘の際に出血を伴いやすくなります。
治療方法
食事療法
食物繊維を多く含んだバランスの良い食生活を心がけましょう。
ごぼう、バナナ、こんにゃく、海藻類、納豆、きのこなどを積極的に摂取することが大切です。加えて乳酸菌も腸内環境を整える効果があるので便秘型の人に効果が期待できます。
たばこ、香辛料、アルコール、脂っこい食事は、症状の悪化につながりますので、なるべくお控えください。下痢型の人は、脱水に気を付ける必要があるので、たくさん水分補給することが大切です。その際、冷たい飲料はお腹を刺激するのでなるべく常温や温かい飲み物を飲むようにしましょう。
運動療法
気分転換やストレスの解消を図るためにも、適度な運動は大切です。日々の生活の中で、無理せず体操や散歩などの軽い運動を取り入れることで腸の働きを正常に整える効果が期待できます。
薬物療法
食事療法、運動療法での改善が見込めない場合には、薬物療法による治療を取り入れます。患者様の症状や状態に合わせて、適切なお薬を処方いたします。
腸内のセロトニンの働きに作用して、症状を早期に抑え改善するお薬もご用意しております。
治療薬について
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セロトニン3型受容体拮抗薬
腸内のセロトニンの働きを抑えることで下痢や腹痛の症状を改善していきます。下痢型過敏性腸症候群に処方する治療薬です。
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高分子重合体
水分を吸収して便の水分バランスを整える(ちょうどよい硬さの便に保つ)治療薬です。
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消化管運動調節薬
消化管運動を調整したり、大腸のぜん動運動を抑制したりすることで、下痢や腹痛などの症状を改善させます。
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下剤
腸の運動を活発化させて、便を柔らかくします。
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乳酸菌製剤
腸内の乳酸菌を増やして、腸内環境を整えます。
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抗コリン薬
腸の異常な運動を抑制させて腹痛を和らげます。
逆流性食道炎
胃は強力な胃酸から自らを守る事ができますが、食道にはその備えがありません。
逆流性食道炎は、胃液や胃で消化される途中の食物が食道に逆流し、強い酸にさらされた食道が炎症を起こすことで胸焼けや胸の痛みなどが起こる病気です。日本人には比較的少ない病気とされてきましたが、食生活の欧米化などによって患者数が増えてきています。
逆流性食道炎の症状
- 胸やけ・吞酸(どんさん:のどの辺りや口の中がすっぱく感じる状態)
- 胸の痛み(胸がしめつけられる)
- 咳・喘息(逆流した胃液がのどや気管支を刺激します)
- のどの違和感、声のかれ(逆流した胃液でのどに炎症をおこします)
逆流性食道炎の原因
逆流性食道炎の原因として、食道裂孔ヘルニアという食道と胃のつなぎ目がゆるくなったことにより、胃酸を含む胃の内容物が逆流しやすくなった状態が考えられます。食道裂孔ヘルニアは加齢による下部食道括約筋の脆弱化、食生活、生活習慣、肥満、腹圧が原因と言われていますが、生まれつきの人もいます。
下記に当てはまる方は胃液の逆流が起こりやすくなります。
食事内容
- 脂肪分の取りすぎで、何も食べていない時でも下部食道括約筋がゆるんでしまい、胃液が逆流してしまうことがあります。
- タンパク質の多い食事は、消化に時間がかかるため、胃に長くとどまってしまい、胃液の逆流が起こりやすくなります。
生活習慣
- お酒の飲みすぎ、煙草の吸いすぎ
- ストレス・過労
- 肥満体系、背中が曲がった人
加齢
加齢が原因で、下部食道括約筋の働きが低下してくることがあります。また、蠕動(ぜんどう)運動の低下、唾液の量も少なくなるため、胃液の逆流が起こります。
他の疾患の治療に使用する薬の副作用
血圧、喘息、心臓疾患などの治療で使用する薬の中には、下部食道括約筋を緩める作用がある薬があり、その影響で胃液が逆流してしまいます。
逆流性食道炎の診断と治療
逆流性食道炎の診断と治療の方法は、診断的治療と胃内視鏡検査を行ってから治療するものに大きく分けられます。
診断
逆流性食道炎の診断と治療の方法は、診断的治療と胃内視鏡検査を行ってから治療するものに大きく分けられます。一般的に行われている診断的治療は、症状から逆流性食道炎を診断します。胃酸の分泌を抑える薬を2~4週間内服した後に治療効果をみていきますが、胃潰瘍や胃がん、食道がんなど、同じような症状を起こす病気であった場合も一時的に症状が緩和してしまうため、重篤な病気の診断が遅れてしまう可能性があります。
当院では、基本的に治療前に胃内視鏡検査(胃内視鏡検査)を行い、実際の食道粘膜の炎症の程度を観察し、症状が実際に逆流性食道炎によるものであることを確認した上で、重症度を考慮した治療を行うことをおすすめしています。
治療
逆流性食道炎の治療には、生活指導と薬物療法があります。
生活指導では、食後に胃酸や食べ物が逆流しにくい生活習慣を指導します。食後すぐ横にならないことや、腹圧の上がる前かがみの姿勢を避けることで、逆流性食道炎はある程度の予防と治療が可能です。また、逆流を起こしやすい食品を避けることも重要です。
逆流性食道炎の薬物治療では胃酸の分泌を抑制する薬剤、胃や食道の食べ物を送り出す運動を活発にさせる薬剤、食道・胃の粘膜を保護する薬剤が使われます。
他にも、胃酸の分泌を抑える薬剤と併用して治療を行うケースもあります。症状や他の疾患などを考慮した上で、最適な処方について提案しています。
大腸ポリープ
大腸ポリープとは
大腸ポリープは、大腸にできるイボのような病変です。
大きさは1mm程度から5cm以上と様々で、原因についても炎症性のもの、過誤腫性(大腸粘膜に迷入した細胞から発生する)、腫瘍性のものなどが多様です。
大腸ポリープの8割以上は腫瘍性と考えられておりますが、腫瘍性のポリープは放置すると少しずつ大きくなり5年ぐらいでがん化する可能性があります。
そのため、疑わしいポリープを切除することは、大腸がん予防に繋がります。
大腸ポリープ切除の重要性
大腸がんは大腸ポリープが成長していく過程の中で生まれ、1つのがん細胞が何年もの時間を経て進行大腸がんになり、やがてリンパ節や肝臓などに転移していきます。大腸がんは40歳頃から増え始め、50歳代で加速し、60歳代、70歳代と高齢になるほど大腸がんになる確率は高くなります。
そのため、40歳から3年に一度のペースで大腸内視鏡検査を受けることをおすすめします。大腸がんの進行速度は比較的遅いため、3年に一度の検査で充分な効果が期待できます。 大腸がんは早期に発見して治療を開始すれば、ほぼ治る病気になってきました。全国がん(成人病)センター協議会のデータによると5年相対生存率は、ステージⅠなら97.6%、ステージⅡでも90.0%と高いものになっています。 ポリープの段階で内視鏡を用いた切除を行うことは進行がんになる芽を摘むことであり、すでに大腸ポリープががん化していても早期であれば内視鏡切除で治ります。
内視鏡的ポリペクトミー
内視鏡の先端についているループ状のスネアという電気メスをポリープの付け根にひっかけ、徐々にスネアを締め、電気を流して焼き切る手法です。ポリープ切除で一般的に行われているもので、切り取ったポリープは顕微鏡で病理検査を行って、がん細胞がないか確認します。
内視鏡的粘膜切除術
平坦なポリープや早期大腸がんに用いられる手法です。ポリープに生理食塩水を注入してからスネアをかけて締め付け、切り取ります。回収した組織は検査を行います。
ポリープや大腸がんは腸の一番内側を覆っている粘膜の層から発生するため、早期のポリープや大腸がんは平坦なことがよくあります。一般的な手法で平坦なポリープや大腸がんを切除すると筋肉より深い層にダメージを与える可能性があり、腸に穴が開いてしまう恐れがあります。この手法では、粘膜層のすぐ下にある粘膜下層に専用の液体を注入することで粘膜層を持ち上げることで安全・確実に切除することが可能です。
コールドポリペクトミー
大腸ポリープ切除を行う際、通電せずにスネアで引きちぎるように切除する方法です。切除後の出血や穿孔(腸に穴があいてしまうこと)などの合併症が少ないと報告されています。
通常通り通電してから切除すると、周囲粘膜や病変の底の部分に熱傷がおきその部分が切除後しばらくしてから脱落することで出血や穿孔の合併症が起こりますが、病変周囲の脱落により完全切除率が高くなると考えられます。通電しないコールドポリペクトミーでは、逆に言えば、病変が残存し再発率が高くなってしまう可能性も指摘されています。当院では抗血小板薬が中止できないなど、リスクの高い症例を選択しコールドポリペクトミーを行っています。
切除後の注意事項
日帰りポリープ切除は日帰りとはいえ手術です。切除時には出血していなくても、切除後2週間ぐらいまでは出血(0.6%)が起こる可能性があります。また、切除後約3日間までは腸に穴が開いて腹膜炎等が起こる危険性(0.04%)もあります。
そのため、帰宅後はご自宅で安静を保つなど、患者様にお守りいただく必要がある注意点がいくつかあります。以下の事をご理解いただいた上でご予約ください。切除後2週間は、切除でできた傷が治る期間のため、その間は下記の注意点をお守りください。また、予約日時を選ぶ際には、2週間後までこうした注意点を守れるスケジュールをお考えください。
切除日から3日間
できるだけ安静に過ごします。 充血から出血を起こしやすくする長時間の入浴や熱い湯につかるのは避け、シャワーや短時間の入浴にとどめます。 事務系の仕事や簡単な家事であれば翌日から可能な場合があります。
切除後2週間
重いものを持つなどの力仕事や重労働は腹圧がかかりますので、切除後2週間は避けてください。
飲酒も出血の原因になるため、10日~2週間は禁止です。激しい運動は腹圧がかかり出血を起こす可能性があるため、2週間はできません。テニス・ゴルフ・水泳・ジョギングなどのほか、自転車に乗ることや30分以上の連続歩行も避けてください。
旅行や出張は、出血等の際に緊急止血処置が迅速かつ的確に行えない可能性がありますので、2週間は避けてください。
服薬中の方
抗凝固薬や抗血小板薬を服用していると出血リスクが高くなるため、抗凝固薬や抗血小板薬を一時休薬した上でのポリープ切除が望ましいです。バイアスピリン・プラビックス・プレタール・ワーファリンなどの脳梗塞・心臓病・その他血栓症の予防薬などがあるため、内視鏡検査の1週間前までに外来診察でお薬手帳などを確認しています。
抗血小板薬や抗凝固薬の休薬により血栓症が発症する危険度が高まるため、掛かり付け医・主治医の先生への確認が必要になる場合もあります。
血便・おしりからの出血・便潜血陽性
血便とは
血便とは、便が消化管から直腸・肛門を通る間に出血した血液が混じったものです。
肉眼ではっきり出血を判断できるものから、便の中に血が混じり一見すると分かりませんが便潜血検査等で陽性反応がでて判明する、排便後にティッシュに血が付く程度のものまでが、血便に該当します。 これらの症状には何らかの病気が隠れている可能性が高いので、当院を受診してください。
血便の原因
出血している臓器によって症状の現れ方も変わります。肛門や直腸等、おしりの出口から近い場所での出血の場合は鮮血便(鮮やかな赤色の血)になります。
胃や十二指腸からの出血からくる血便は、便が黒くなるタール便(黒色便)となります。大腸の奥側からの出血の場合は、暗赤色便の状態で、大腸の感染症や炎症によるものは粘り気のある血(粘血便)となって現れます。
肉眼では全くわからない場合でも便潜血検査で陽性反応が出た場合には、痔や大腸ポリープ、そして大腸がんからくる出血の可能性があります。便潜血陽性の場合には精密検査を受けることが重要です。
血便から考えられる疾患
痔(裂肛)
- 出血量
- 少量から多量
- 出血している臓器
- 肛門
- 便の状態
- 鮮血便
直腸がん、直腸ポリープ
- 出血量
- 少量
- 出血している臓器
- 直腸
- 便の状態
- 鮮血便
大腸憩室出血
- 出血量
- 多量
- 出血している臓器
- 大腸
- 便の状態
- 暗赤色便
感染性大腸炎、虚血性大腸炎
- 出血量
- 少量から多量
- 出血している臓器
- 大腸
- 便の状態
- 暗赤色便
メッケル憩室出血、小腸潰瘍
- 出血量
- 多量
- 出血している臓器
- 小腸
- 便の状態
- 暗赤色便
胃潰瘍、十二指腸潰瘍
- 出血量
- 多量
- 出血している臓器
- 胃、十二指腸
- 便の状態
- 黒色便
小腸潰瘍、小腸腫瘍
- 出血量
- 少量から多量
- 出血している臓器
- 小腸
- 便の状態
- 黒色便
炎症性腸疾患、アメーバ腸炎
- 出血量
- 少量から中等量
- 出血している臓器
- 大腸
- 便の状態
- 粘血便
便潜血陽性で考えられる疾患
大腸がん、大腸ポリープ、大腸炎
- 出血している臓器
- 大腸
- 便の状態
- 潜血便
痔(裂肛、痔核)
- 出血している臓器
- 肛門
- 便の状態
- 潜血便
直腸がん、直腸ポリープ
- 出血している臓器
- 直腸
- 便の状態
- 潜血便
検査の流れ
問診
まず症状について問診し、血便の状態で出血部位をおおよそ推測する事いたします。血便の色や状態、量、排便時の腹痛の有無、急性か慢性かなどを細かく問診で確認してから必要な検査を選択していきます。
腹部診察・直腸診
問診と共に腹部の張り具合、痛みの部位や程度、腸の動きが過敏か緩慢かなどを診察させていただきます。痔の疑いがある場合は、肛門や直腸の状態を確認するために直腸診を行います。その際、医師が手袋をしたうえで麻酔ゼリーをつけて肛門から直腸内を触診します。
血液検査
血便による貧血の有無のほか、炎症の程度について確認できる検査方法です。
腹部レントゲン・腹部超音波検査
腹部レントゲン検査と腹部超音波検査を併用して、腸管ガスや便の溜まり具合、腸管内の液体や腹水などの溜まり具合、腸管のむくみの状態などを確認します。腸管内の炎症や虚血の際に有効な検査方法です。
内視鏡検査
大腸内視鏡検査直腸の奥から大腸にかけての病気が疑われる場合に用いる検査方法です。大腸内視鏡検査で直接大腸の状態を観察することで、より正確な診断が可能となります。
胃内視鏡検査タール便の症状がみられる際に用いる検査方法です。黒っぽい便は、胃や十二指腸からの出血が関係しています。胃内視鏡検査は、出血範囲を特定し、クリップなどによる処置で止血することが可能です。
治療方法
診察や検査方法に原因を突き止めて、軽度の場合はお薬の処方等で経過観察します。しかし、まれに大きな病気が確認した場合は、疾患に合わせた適切な治療を行っていきます。
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痔による血便の場合
痔核(いぼ痔)や裂肛(切れ痔)からくる出血の場合は、軽度であれば軟膏やお薬により治療を行います。
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大腸がんによる血便の場合
病気の進行具合により手術や抗がん剤治療などを必要とします。多くは自覚症状がないため、便潜血陽性の判定を受けて追加の精密検査で発見されます。
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虚血性腸炎による血便の場合
問診や腹部エコー、大腸内視鏡検査により虚血性腸炎が確認された場合は、軽度の場合には絶食と点滴により改善が見込めます。
便秘と下痢の診断と治療について
便秘とは
便秘とは、一般的に排便が順調でない状態をいいます。また、排便の回数だけで便秘と判断するわけではなく、1回の排便の量が少ない場合や排便時にいきむことが多い、排便後に残便感があるといった状態も便秘であると考えられます。
放置するとどうなる?
便秘症状を放置していると大腸内に腐敗菌が溜まり、おならが臭くなります。肌のトラブル(肌荒れ・吹き出物)、食欲の低下、肥満、脂質異常症などの原因にもなります。
便秘の自覚症状がある方の多くが、市販に販売されている薬を飲んで無理に排便をしようと取り組んでいるとお聞きします。ただ、その方法では腹痛を起こすこともあり、根本的な便秘の改善にはつながりません。便秘の原因は人によって異なりますので、医師に相談して治療に取り組むことをおすすめします。
便秘の種類
便秘は大きく分類すると、器質的便秘と機能的便秘に分けられます。
器質的便秘とは、便秘の原因が他の疾患が原因と考えられる便秘をいいます。例としては、大腸がん、炎症性腸疾患、肛門疾患などが考えられます。
機能的便秘は、さらに以下のように3つに分類できます。
- 弛緩性便秘(しかんせいべんぴ:腸が動かない事が原因)
- 痙攣性便秘(けいれんせいべんぴ:腸の緊張が強い事が原因)
- 直腸性便秘(ちょくちょうせいべんぴ:便が直腸で止まっている便秘)
便秘の原因を診察や必要な検査で評価し、症状にあった薬の処方、食事指導、生活指導を行いながら治療を進めていきます。
便秘の診断・治療の流れ
診察・検査の結果から便秘症状の原因を診断し説明いたします。
治療は、薬物治療、食事指導、生活指導を組み合わせて行います。便秘の原因は、患者様によって異なりますので、一人一人に合った薬の組合せや量の指示を行い、排便習慣が改善されてくれば徐々に薬の使用を減らしていきます。
下痢とは
下痢とは、水分量を多く含んだ便を頻回にきたす状態をいいます。下痢は、短期間で症状が解消する急性下痢、1ヶ月以上継続する慢性下痢があります。
急性下痢の原因はウィルスや細菌感染などによる胃腸炎などが原因であることが多く、脱水予防の補液と整腸剤による治療、必要に応じて抗生剤治療となります。
慢性下痢の原因は多岐にわたります。
下痢の原因
下痢の原因としては、過敏性腸症候群、潰瘍性大腸炎やクローン病といった炎症性腸疾患、大腸がん、薬(特にPPIという胃酸分泌を抑制する薬)による副作用、慢性膵炎、甲状腺機能亢進症、生活習慣(食べすぎ、飲みすぎ、ストレスなど)などが挙げられます。
下痢の診断、治療の流れ
問診
既往歴(きおうれき)の確認、いつ頃からどのような下痢の状態かの確認、腹痛の有無、内服薬や生活習慣(食事内容・ストレス)、意図しない不眠・動悸・体重の減少、などをお聞きします。
診察
触診でお腹の状態や痛みの部位を確認し、腸の動きを聴診で確認します。場合によっては、痔瘻(じろう)の有無なども観察します。
また、必要に応じて採血や腹部エコーや大腸内視鏡検査を行い原因検索を行います。慢性膵炎が疑われる場合は、近隣の総合病院へCT検査を受けに行って頂くこともあります。
治療方法
慢性下痢の原因となる疾患が特定できたら、まず原因疾患の治療を行います。特に炎症性腸疾患の治療は継続的な治療と経過観察が必要となります。原因疾患がない場合は、過敏性腸症候群が考えられ生活習慣やストレスを解消していくために、患者様の状況に合わせて治療を行っていきます。